東京パラリンピックまであと1年をきりました。
世界最速のパラアスリート、デイヴィッド・ブラウン選手は、パラ陸上100mで10秒97の世界最速の視覚障がいランナーです。その隣で伴走者として走るジェローム・エイブリーさん、二人がどのようなプロフィール・経歴をおもちなのか、二人の走りについてなど、気になったので調べてみました。

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デイヴィッド・ブラウン選手のプロフィール

名前:デイヴィッド・ブラウン David Brown
国籍:アメリカ
生年月日:1992年10月19日
年齢:26歳(執筆時)
競技(種目):陸上(トラック/100m)・T11クラス
協賛:Toyota Motor North America
主な戦績:
2015年10月 障がい陸上 世界選手権 Doha2015 優勝(100m・T11視覚障がい)
2016年  リオパラリンピック男子障がい100m(T11)10秒99 ★パラリンピック新記録

デイヴィッド選手は、6歳のとき、病気で左目を失明、右目もほとんど見えず、日常生活では杖がかかせません。
活発な子供だったデイヴィッド選手は、視力を失ってからは、自由に外を遊び回ることもできなくなりました。
10代の頃に陸上競技に出会います。

伴走者:ジェローム・エイブリーさんのプロフィール

名前:ジェローム・エイブリー Jarome Avery
国籍:アメリカ
年齢:40歳(執筆時)
自己ベスト:100m:10秒17

ジェロームさんは、かつて、100mのオリンピック代表になることを夢見ていました。
全米選手権の準決勝まで進出しましたが、憧れの舞台に立つことはできませんでした。
その後、伴走者としてもう一度世界を目指してみたい。と、伴走者として再び夢を追う中で、爆発的なスピードを秘めたデイヴィッド選手と出会います。

デイヴィッド・ブラウン選手とジェローム・エイブリーさんの出会い

二人は、アメリカ、カリフォルニア州チュラビスタ・エリートアスリート・トレーニングセンターを拠点として練習しています。
二人がペアを組んだのは、5年前(2014年)です。

デイヴィッド選手は、10代の頃に陸上競技と出会いましたが、自分より速い伴走者がいなかったため、全力で走る感覚を取り戻せずにいました。
そうした中で、10秒17の記録を持つジェロームさんと出会います。

デイヴィッド選手は「これ以上ない幸せな瞬間だった。ジェロームと走って、初めてなにも考えずにフルスピードで走ることができました。自分が走りたいスピードで走っても大丈夫か、そう心配する必要はなくなったのです。」といいます。

ジェロームさんは、「デイヴィッドは、私に新しい道を開いてくれた。ひとりで走っていたときとは全く違います。
そして、東京パラリンピックが私の引退試合になるでしょう。
デイヴィッドとの集大成の舞台、どの大会より大きな意味を持ちます。
10秒7の世界記録をだすんです。」といいます。

デイヴィッド選手、ジェロームさんたちの記録

リオパラリンピックでは、男子100m、T11クラス(視覚障がいが最も重いクラス)で、10秒99のパラリンピックレコードを更新。
史上初めて、10秒台の記録です。

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デイヴィッドブラウン選手とジェローム・エイブリーさんの走りの秘密

視力を失いながら、なぜトップスピードで走ることができるのでしょうか。
その秘密は伴走者にあります。
まるでひとりで走っているかのように見事にシンクロする走り。
二人をつなぐ10cmほどのロープで、またたく間にお互いの動きを一致させる、驚きの技です。

人間は、情報の9割を視覚から得ているといわれています。
残された感覚だけで陸上競技に挑むのは、想像を超えた困難が予想されます。
デイヴィッドさんはかつては、レース中に何度も転倒していました。
暗闇の中を全力で走ることは常に恐怖と不安がつきまとっていました。
「何が起きているかわからず、とても怖かった。トラックから外に出て、物にぶつかったり、まっすぐ走れず転んでしまったり、ただただ恐怖だった。」とデイヴィッド選手はいいます。
その恐怖を取り除いてくれる存在が、伴走者のジェロームさんです。
長さ10㎝ほどのロープをふたりで持ち、選手がまっすぐ走れるようにガイドします。
二人の走りは、まるでひとりで走っているかのようにシンクロしています。

デイヴィッド選手は、「ジェロームとシンクロして走ることで、すべてがうまくいく。走ることへの恐怖は消える」といいます。
ジェロームさんは、「走っている間は一つになる。私達は二人で1人なのです。」といいます。

ガイドのためのロープが、シンクロを可能にする秘密になっています。

デイヴィッド・ブラウン選手とジェローム・エイブリーさんの走りの解析

二人が1つになる”シンクロ”の秘密を、鹿屋体育大学(鹿児島・鹿屋)が科学的に分析しました。
シンクロがスピードとどう関係しているのか、最新のハイスピードカメラで様々な方向から撮影しました。
比較のため、日本のトップペアも参加しました。
(日本選手権 男子100m優勝 鈴木秀俊選手・伴走者:青木邦成さん 自己ベスト:12秒06)

日本のペアの走りを、カメラで横からみると、地面に足のつくタイミングや、ロープを持つ腕の振りにずれが生じていて、スピードをロスしてしまいます。
伴走者は、選手とシンクロするために、頻繁に選手の方を見ています。
これもスピードのロスにつながります。

一方、アメリカのペアの走りは、まるで1人で走っているかのようにシンクロしています。
伴走者のジェロームさんは、まっすぐ前を向き、一度も選手を見ることはありません。
足を着くタイミングも場所も、きれいに一致しています。
腕の動きも一致しており、スピードのロスが極限まで抑えられます。

この、究極ともいえるシンクロを、二人はどのように実現しているのでしょうか。

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